SSを完走した感想

 どうも、ほぼ日刊Najikoのライター、Najikoです。

 ついに書き終わりました、SS「Nuj計画」シリーズ。まあ、計画全然終わってないし、なんだったら始まってないくらいなんですけどどうしたらいいんですかねこれは(?)
 書き始めた頃も同じようなことを書きましたが、この話は昨年からフレンドのクラゲさんが開いているクトゥルフ神話TRPGのセッション後の話を勝手に考えて書いています。最初は、続き物にしようというつもりもなく、後日談をちょろっと書いて満足、という感じだったのでした。しかしそのうち、きっかけは後述しますが「あ、これはお話が1個できるんじゃないだろうか」と唐突に思いついたので書いてみたわけです。
 色々ありましたが、お話を思いついた当初はそもそも真夏ちゃんは登場しませんでした。名治子のロクでもない計画に珠子が加担させられ、深木少年を巻き込んでいく……というところまでは考えたのですが、どう着地させても後味の悪いお話にしかなりそうになかったので、どうしようかなー、と思っていたところ、職場で雑談している際に年上の人から「昔の出会い系の手口」というのを聞きました。電話ボックスの中に電話番号が貼ってあって、かけると白い車が迎えに来る、というものです。どこまで本当なのかはともかくとして、ちょうど深木くんをどうやってINCTに連れて行くかも考えていたところだったので「お、それいいな……使おう」と思ったのですが、それとほぼ同時に「この方法なら真夏ちゃんを乱入させられそうだな」と閃き、乱入させることにしました。真夏ちゃんは設定上名治子の関係者だったので、名治子のエピソードに登場させれば必ずお話を引っ掻き回すことができます。さすれば、お話を丸く収めることができそうだ、と考え、その方向でお話を考えていくことにしました。


 問題は、どのようにして名治子の計画を真夏ちゃんが挫くかというところでした。初めはもっと穏便に、全員で話し合っている最中に真夏ちゃんが「その方法では深木は救われない」ということを指摘して名治子の目論見を未遂に終わらせる、という話を考えていたのですが、この方向で行くと「そもそも真夏ちゃんは何しに来たのか」とか、「どうやって計画の概要を知るのか」とか、「全員が一堂に会して話し合いを行う場面がそもそもないのではないか」とか、問題が山積してしまうことになったので、真夏ちゃんに別行動をとらせている間にある程度名治子の目論見を進め、さらに騒ぎを起こすことで真夏ちゃんが計画に巻き込まれている深木くんと接触するチャンスがあることにしたらいいんじゃないか、ということでその方向に舵を切っていきました。
 ですが、今度はロジックの問題にぶち当たります。真夏ちゃんが内情を知ったとて、深木くん自身が名治子の説得に乗ってしまえばそれをやめさせる権利は真夏ちゃんにはありません。道義的に正しいことを言わせたところで、当事者の深木くんが抱えている問題が大きすぎるので、それは「真夏ちゃんが気に食わないから」、という以上の理由にはならないことがわかってきたんですね。そこで、第一の矢として真夏ちゃんに「人格のコピーを所持させる」ということを思いつきました。コピーが入ったディスクを名治子に見せ、真夏ちゃんは何かしら凶器になるものを自分に突き付けます。
 「ねえ、それなら私がこうしても平気だってことだよね? だって、”私自身”はこのディスクの中にいるんだから、仮想世界の体に新しい私を作れば同じってことでしょ?」
真夏ちゃんがそう言えば、名治子は「それは待ってください」と、考え直しはするでしょう。けれどそこまでしたとしても……深木くんが「いや、どのみちこの体とはおさらばしたいから別にそれでいいんだけど……」と言い出しちゃうと結局「真夏ちゃんが気に食わないから食って掛かったら名治子が折れて諦めちゃった」という域を出ないのではないかと思い、再びどうしよっかなー、と考え始めます。


 まあ、人格のコピーを突きつける流れはとっておいてもいいだろう、と思ったのでそれが可能なシチュエーションを考え始めました。なんらかの装置を介さなければいけませんが、真夏ちゃんが勝手に使って勝手に人格のコピーを作成するところまで成功させなければなりません。無理じゃろそんなんどう考えても。とはいえ一度現物に触れさせておかなければ人を説得するには弱いので、名治子が不在の部屋に勝手に入って装置を使う、というところはよしとしました。普通ならまあ、鍵がかかってて入れないところですが、非常時には開錠するだろうということで深木くんの大暴れ騒ぎに乗じさせてスッと入り込みます。ここまではいいのですが、問題は例の装置です。人格のコピーをするだけの装置が研究室にポツンと置いてあるというのは考えにくいですし、名治子がほぼ単独でVRの研究をしているのであれば、部屋にあるのはVRのための装置ではないか、ということでMorphee Gearがあることにしました。まあ、INCTは以前からVRの研究自体はやっていたのでしょう。それで、名治子は体験会の一件もあり末峰コーポレーションからの技術提供を受けて作成したフルダイブVR装置の試作機を1台研究用に預けられている、というようなことであればまあ、あってもいいか、というところまで来るかなと思いました。また、セッション中、末峰が自室でVR空間に籠って単独で長時間のオフィスワークを行っていたというのもあるのでそれも踏まえれば妥当性は十分でしょう。あとは好奇心旺盛な真夏ちゃんが部屋で勝手に装置を使う……という流れです。あらかじめ「こんな機械で研究やってるよ」と名治子が真夏ちゃんに教えていたということにすればまあ、用途も見当がつきそうですし、盤石です。いや極秘の研究じゃないんかい、というのはありますが、VRの研究自体は別に極秘でもなく、そもそも名治子がVR体験会に参加した様子は全国放送されていたので「あんなやつうちでも研究してるんですよ」くらいの話はまあしてもいいよね、ということで……


 話はちょっと変わって「Nuj計画」についてですが、これは2020年に、みつき氏のV戯王のワールドに送ったカード群の背景ストーリーとして考えていたものです。遊戯王公式の背景ストーリーですらあんなに出し惜しみされてるんですからもうそんな話はお披露目する機会はないだろうと思っていたのですが、要するに「Vroid Studio出身のNajikoというキャラクターが新たな体を得たいと思い、アバターの研究を行う中でロポリこんを対象にした際に発生した改変済こんちゃんたちとそれにまつわる出来事」がそれにあたります。「Nujこん」と名の付くこんちゃんが研究の結果生まれたこんちゃんたちで、当時わたくし自身がこんちゃんの改変バリエーションを多く持っていたのでそこから着想を得て考えた設定です。
 けどまあ、そんな設定あったからなんだっちゅう話であって、別に誰が聞いたって得しないし、めちゃくちゃ面白いわけでもないしな……ということでそれからはただの脳内設定に留まっていたのですが、クトゥルフ神話TRPGのセッションの世界線の名治子がVRにかかわったことでこの計画を立案したということであれば……と考えたのがこの一連のSSのきっかけというわけです。


 で、話を戻して……そこまできたらあとは真夏ちゃんにVR体験をしてもらえばオッケーです。ガイド役はVRの中のNajikoにしましょう。このNajikoはVRC内でわたくしが使っているアバターであり、後にこんちゃんをNuj計画に組み込むことになる人物です。ただし、現時点ではまだテスト段階で、単独で行動しているのではなく現実の名治子の統制下にあり、エピソードも24時間しか記憶できない、ということにすればこの時点で真夏ちゃんと遭遇していても後の計画の流れに矛盾をきたさずに済みます。さらにその設定は、真夏ちゃんが現実の名治子とVR内のNajikoの大きな違いを認識するファクターとしても機能します。そして、あとは真夏ちゃんが人格をコピーする動機が要るわけですが……これもVR内のNajikoの成り立ちを聞けば、自分も同じようなの作って欲しい! という点と、ずっとVR空間内に孤独のまま働いているNajikoに友達を残していきたい、という真夏ちゃんの押しつけがましい優しい一面を発揮させれば通りますね。で、どうせだったら猫好きな真夏ちゃんは自分をモデルにしたアバターをもっと猫っぽいかわいい人物にしたがるはずです。となると……

これが……

必然、こうなりますわね……はい。そう、別に無理にでもたまなつちゃんを絡めようと思ったわけではないんですよね……でも逆に真夏ちゃんをモデルにしたVRアバターがたまなつちゃんと似ても似つかない方がおかしいじゃないですか。実際には真夏ちゃんというキャラクターのモデルがたまなつちゃんなので。逆輸入というか、互換性というか……たまなつちゃん自体、実はNuj計画の最終段階で生み出されたという設定がわたくしの中ではあったんですよね。「新たな魂の器」として理想的な存在として作られた複合改変アバター、それがたまなつちゃんです。しかし、この魂の器はなぜか完成した段階で自我を持ってしまいました。まあ、それはなんでかっていうとメタ的な話としてはわたくしが愛着が湧きすぎて一人のキャラクターに仕立て上げてしまったからなのですが、キャラクター設定として何故自我を持ってしまったのか、というところはあやふやなままでした。それが実はNuj計画の初期段階という過去の時点で真夏ちゃんから受けたオーダーを無意識のうちにNajikoが実行していたから、というところでなんかうまく理由がついたのでなんかまあ、本筋とは関係ないところで話が繋がってよかったな、という感じでした(いいのか?)

 これである程度話を収める条件は整ってきました。あとは真夏ちゃんが深木くんか名治子を説得すればいいわけですが、まだどっちかを説き伏せることに成功したとしても真夏ちゃんのゴネ得なので、一工夫加えなければなりません。名治子は説得しようと思えばできるでしょうが、深木くんを納得させなければダメです。それも、一方的な意見の押しつけで言いくるめるだけではいけません。まあ真夏ちゃんは子供なので、意見は押しつけるでしょうけどそれを踏まえて深木くんが自分で考えて決断するプロセスが必要……ということで、真夏ちゃんと深木くんを再会させ、深木くんにカミングアウトしてもらうことにしました。夜中に真夏ちゃんが部屋を抜け出して会いに行くのでも良かったのですが、そうすると赤森の世話になっている以上は夜の間に彼の話を聞きだしてしまうでしょう。それよりは、本人の意思で全部話してもらう方が後腐れがないので、真夏ちゃんが単独行動している間に会いに行くようにしました。で、ここでの話のポイントは、
真夏ちゃんが深木くんの体質と名治子からもちかけられた計画について聞く→自分もVR体験をしてきて名治子AIと会ってきたことを伝える→その上で、その方法では深木くんが救われないことを看破する
という流れですが、まだ看破されて「そっか」とはいけません。深木くんはもう自分の体質にはうんざりしているからです。もちろん、赤森との出会いを通じて「頑張って生きよう」と思っていた手前ではあるのですが、日中にトラブルを起こしてメンタルがやられているところに名治子から揺さぶりをかけられているところですから、自分に都合の悪い話には簡単に迎合できないでしょう。そこでもう一押し、真夏ちゃんの元々のエピソードを交えた話を持ち掛けて彼に考える機会を与えます。真夏ちゃんは猫を追っかけているうちにたまにドリームランドに迷い込むことがあり、セッションで登場した回では3日もそっちで過ごして痕跡を断っていたこともありましたが、彼女を大事に思っている家族の奈治男氏が危険を顧みず探しに行っていた、という経緯があります。だから、VR世界は魅力的だけどそっちにずっといるようでは「こちらの家族が悲しむ」というクソデカい重りを天秤に落とします。すると、兄妹がいる深木くんはそのことを思い出して決心が揺らぐわけですね。けど真夏ちゃんとしては自分のエピソードはあくまでも自分の感想なので、それ以上のことは言いません。そして、本来の目的は名治子に会いに来たことなので、翌日には自分が話したいことは話す、と告げて去っていきます。

 さて、仕込みは十分です。あとは翌日名治子に会って言いたいことを言い、深木くんの方も一晩考えてやめた、ということで話は収まるのですが……それだけだとお話に起伏がないので、もうひと騒動起こすか……と思いました。そして翌日、深木くんが暴走して名治子を殺しかけます。深木くんはストレスで体が変質する傾向があるので、朝から名治子に話しかけられて板挟みになればまあ、キチゲが爆発します。それも真夏ちゃんが来なければ爆発しなかったわけですが、真夏ちゃんは言うべきことを言ったという認識なので後々曇るわけですね。真夏ちゃんが眠っている間にドリームランドに招かれるくだりはちょっと贅沢が過ぎるかな、と思いはしましたが、セッションの中で実際に迷い込んで普通に世話になってるし、書けそうなエピソードは全部ぶちこみたいのでそのようにしました。やりたいことやるの、大事。それに真夏ちゃんが何のテコ入れもない状態でスーパー深木くんと対峙したらさすがに無事では済まないので、「敬虔な信徒」として助け舟が出されても良いでしょう。何より、真夏ちゃんはバーストが贈ったアーティファクトを身に着けているのでギリギリその資格はあるでしょう。もっと言えば、深きものどもは種族的にはアザトース配下のクトゥルフ陣営なので、旧神であるバーストから見るとまあまあ邪悪なものです。ちょっとお世話してあげてるデカい猫みたいな信徒がその邪悪と接触する危機に見舞われそうなら、ちょっとくらい助けてくれるんじゃないでしょうか。助けてくれるんですよ。で、真夏ちゃんに魔法を込めます。なんか猫由来のいい魔法がないかなと思ってはむさんからいただいたフラグメントの猫のところをよーく読んでいたんですが、なさそうだったので「破壊の呪文」と「旧神の印」を使いました。旧神といってもバーストはヌトスとは関係がないのですが、まあ、小細工程度には使えるでしょう、神だもんね! あと破壊の呪文の効果が一時的なものであることは元々の設定通りです。でも使っちゃった真夏ちゃんはそんなこと知らないので深木くんを殺害してしまったかもしれない、と曇るわけですね。SAN値チェック、1or1d6です。

 あとはまあ、ケガした名治子のところにいき、一時的な破壊から回復してきている深木くんも来て、種明かしというわけです。深木くんを陥れようとした名治子が平穏無事に終わっちゃうのもアレなので、大ケガしてもらってよかったと思います。これについては深木くんが謝罪を受け入る理由にもなるのでいい塩梅です。また、深木くんの登場回のテーマは「運転の初心者がそうであるように、過ちを犯しても悔い改めることで再スタートできる」というものだったので、それを踏まえて話がついたね、ということで……あとは個別エンディングをして、みんな相変わらずだけど悪いことばっかりでもなかったね、とハッピーエンドに持って行きました。ディスクが余っちゃったけどな!これはもしまた新しい話を思いついた時にでも……

 総合的に、深木くんの話を書こうとしてたら真夏ちゃんが主人公になっちまったな、という感じなんですけど結果的に真夏ちゃんが「設定があるセッションの登場人物」から「物語の登場人物」になることができたので、わたくしとしては良かったかな、と思います。ありがとうございました。

 長くなったので、挿絵没画像集はまた別記事にでもしましょうね……

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